クラシック専門店

クラシックにはまっていた時期がある。

何枚かCDを買った。

最近はもう全然聴くことがないので

お店に売りに行くことにした。

 

高貴な作曲家達のCDを

決して高貴とは言えない

僕のカバンに押し込み

いざ出発、てか。

 

普段入ることのないクラシック専門店へ。

店員さんに売るCDを預けて

「◯時◯◯分には査定終わります」

と言われ受付票を預かる。

「はい、分かりましたのでぶらぶらしてます」と僕。

店内を物色。

教科書に出てくるような高貴な

作曲家たちを眺める。

 

立派な白髪のヒゲを

たくわえたおじいさんが

何十枚というレコードをレジに運んでいる。

それがさも当たり前の風景だった。

気付けば僕はこのクラシック専門店に

身を置いていることに馴染み始めていた。

 

査定の終わる時間になり

僕は受付に向かった。

高貴なこの時間を過ごし

買い取り金額のことも

夢が膨らみ始めていた。

 

店員さんに受付票を渡した。

その店員さんの胸元のネームには

自己紹介が書かれていた。

「ドヴォルザークが好きです」

 

僕は妙に納得して期待値は高まる一方だった。

 

そして店員さんはこう言った。

「買い取り金額すべて合わせて190円です」

 

まったく予想していなかった

低い買い取り金額に

一瞬動揺の表情を浮かべてしまったが

店員さんの

「ドヴォルザークが好きです」

というネームを改めて見つめて

 

僕はなるべく高貴な表情を浮かべて

「ええ、それで結構です」

と伝えて

足早にならないよう気をつけながら

クラシック専門店を後にした。

 

「お客様が

ピアニッシモ走行で帰られます!」

 

という店員さんの心の声が

つき刺さった

気がした。