黒いジャンパー

レコード屋に行った。

ソウルやヒップホップ、ディスコ

などがたくさんあるレコード屋に。

 

僕はこの日ブルースしか見たくなかったので

真っ先にブルースコーナーへ。

 

するとブルースコーナーの上を

すっぽりと覆うように

黒いジャンパーが置いてある。

 

ヒップホップコーナーを漁る

強面の人がそこに

黒いジャンパーを置いて

おそろしいスピードで

ヒップホップコーナーを漁っていた。

 

がくぜんとした僕は

「ここ見たいので黒いジャンパーを

ここに置かないでください」

とは言えず

まったく興味のない

AORコーナーを漁るふりをしながら

黒いジャンパーがどこかへ行くのを

眺めていた。

 

「今どきブルースコーナーを見るやつ

なんていないだろう」

という強面男の声が聞こえてきそうだ。

 

想像上の声に対して

想像上の怒りを覚え

AORコーナーを漁る現実の手が震える。

 

そうこうしているうちに

強面男は友人と遭遇したらしく

黒いジャンパーを肩にかけて

どこかへ行ってしまった。

 

ブルースコーナーを見ることに

こんなに焦らされたことはないので

説明不可能なフィルターがかかり

なぜかいつもより心が躍った。

 

そうしたらミッキー・ベイカーが

「エイッ!!」と顔でギターを弾いてる

レコードが出てきて

僕もエイッ!と口にしてはいないけど

そんな顔をして

レコードを引き上げたかもしれない。

 

黒いジャンパーのおかげで

エイッ!という気分になれたのだから

 

良しと

 

しよう?

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