異種格闘技戦

敏腕ギタリストがボクシングのチャンピオンと戦うことになった。

ギタリストは作戦を考える。

向こうのペースに持ち込まれないように、まずは大音量のディストーションギターサウンドで耳を塞がせよう。

イメージトレーニングをしたけど、ディストーションペダルを踏んで弦をかき鳴らす前にパンチを食らうだろう。これはだめだ。

次に浮かんだのは、超絶の早弾きをして相手の目と耳を混乱させようという作戦だった。

これもイメージトレーニングをしたけれど、早弾きのトップスピードに乗るまでに相手のパンチを食らうだろう。これもだめだ。

次に浮かんだのは超ド派手なチョーキングを決めて相手の関心を惹きつけようという作戦だった。

これもイメージトレーニングをしたけれどチョーキングの体勢に入った瞬間、相手のアッパーカットを食らうだろう。これもだめだ。

考えた末にギタリストはギターのボディのとがった部分を相手の頭にお見舞いしてやろうということになった。

この対戦は世界中のギタリストに「ギターの可能性について」改めて考えさせる世紀の一戦となった。