詩以下

ダンボール

鳥が飛んでいる コーヒーから湯気が立つ 本屋に新刊が並ぶ バナナが昨日より傷んでいる いつもの時間に目覚ましが鳴る 立てかけておいた折り畳んだダンボールが 倒れてくる それを元に戻す 未読のメッセージがたまる 布団に入り不安が頭をよぎる 紛らわす方…

ダンス

才能にあぐらをかいている 五感の上で 「見るなら見ろ。聞くなら聞け」 師匠の言葉だ 師匠って誰だっけ ああ、確か今吹いている風だった 街は大きな図書館だ そこら中に学ぶべきものが並んでいる 夕方5時頃、街に影が落ちてくる 地球の傾きを感じる 傾いた…

音の出ないギター

駅前でギターを弾いてる男がいた。 そこへ警察が来た。 「ここで音を鳴らすのは禁止されている」 ギターの男は答えた。 「このギターは無音ギターです。 弾いても音は出ません。 鞄と同じような物です」と。 警察は諦めてどこかへ行ってしまった。 ギターの…

アルバムをめくり 色あせていく写真を 眺めている 眺めている まさにこの瞬間も 色あせていく 抱き合ったまま発掘された 恋人のような関係の 大昔の二人の骨 の話を思い出す つまりは このアルバムを眺めている 自分も 骨 このおれを 今すぐに発掘してほしい…

JAZZ

新宿駅の ある通りに JAZZが流れていた こわれやすい感情を なんとかもちこたえて 涙を流す代わりに それを音にしているような そんな音楽だった そこを人間たちが歩いていく 背広を着た人 学生 集団で飲み会に行く人たち 待ち合わせをしている人 その場にい…

通り過ぎて

季節のように 目の前を横切る電車のように 今朝飲んだコーヒーのように すべては 体を通り過ぎていく 季節を止められないように すべてのものごとは なすすべもなく 通り過ぎていく 通り過ぎて 通り過ぎていく 通り過ぎたかと思うと 通り過ぎていく 去年出会…

愉快か不愉快か

声をひそめて 4人くらいの人間が 何やら話し合っている 4人の顔の表情からして 明るい話題ではなさそうだ それを見続けていると なんだかふゆかいな気持ちになってきた ぞ 話の内容がとても気になってきたので 昨日覚えた 体が透明になる術を早速使って 4人…

考えごとのリサイクルシステム

部屋に戻ってきて 気付いた クッションは 先ほど ヒジをついていたところが 丸く二ヶ所へこんでいる ああ たしかにさっきまで ここに自分はいたと 確認した ヒジに全体重を乗せて さっき何を考えていたっけ 考えごとが クッションをへこませている つまり 考…

忘却

わっはっはっは わっはっはっは! わっはっはっは!! 何が面白いかは もう忘れてしまった

ニーナシモンと道路陥没

世界中の道路で 陥没が起こっているらしい ニュースで見たんだ (ここから先の話は 本当かどうか信じてもらえるか) そう思い込んで 今日町を歩いていたら 急に道路が陥没したんだ 僕は「落ちるー!」 と思うよりも先に まったく知らない場所に いることに気…

「空はまだ青い」

空を観察しようと企んだ人がいた 空は 明るい青から 暗闇の黒へ 変貌する いきなり青が黒になることはない 徐々に徐々に 1分1秒のあいだに 色を変えていっているのだから その変化に気付けないようでは 地球に住む一員として 失格だと その人は思った らし…

アイドンノウ

始まりは空だった 気付いたら傘を開きながら 僕はゆっくり地上に向けて落ちていた なんでこんな状況かは 誰にも説明できない この世界 誰にも説明できないことばかりだね おお、うまく傘を調整して なんとか屋根の上に着地しよう そこはかつて僕が住んでいた…

異種格闘技戦

敏腕ギタリストがボクシングのチャンピオンと戦うことになった。 ギタリストは作戦を考える。 向こうのペースに持ち込まれないように、まずは大音量のディストーションギターサウンドで耳を塞がせよう。 イメージトレーニングをしたけど、ディストーションペ…

空き地のブルース

取り壊した家のあと その空き地に たくさんの草と花が咲いている 彼らはすきあらば どこにでも咲きに行く 花粉や種子は 僕の体にもたまっているはずで 僕の体が 空き地になった瞬間 僕は花になるのだろうか あー 僕は花になりたいとかなりたくない だなんて …

タイムイズマネー?

タイムイズマネー? 時は金じゃない 金は時じゃない 青は空だ 空は青だ と 言える語彙力と想像力が 身に付いた 人間はそうかんたんに だまされない 鳥はピアノで ピアノは鳥か 電気は悪魔で 悪魔は電気か かばんは信号で 信号はかばんだから つまり 鳥はかば…

私はマッチ

私はマッチ町を歩けば生き物や建造物出来事やそれに準ずる感情とこすれ合い発火する私はそうやって町をひたすらに歩く何度発火したかのメーターがあるけれど確認するのをやめたマッチでいることに徹することにしているこの町では

血と血

血管一本一本を僕たちが暮らす町の道路と見立ててみようと彼は言った「あなたの体に流れる血もまた私たちが暮らす町の人1人1人なのです」なるほどだから毎日喧嘩したりうまくやったりするのだなと思った昨日鼻血が出たその血をまじまじと見て友人を思い出し…

音楽の現象

音楽の不思議ソフトロックを愛している人とソフトロックを一緒に聴くとソフトロックがますます好きになりブラジル音楽を愛している人とブラジル音楽を一緒に聴くとブラジル音楽がますます好きになりヘヴィメタルを愛している人とヘヴィメタルを一緒に聴くと…

ろっこつの出入口

私の体には出入り口がいくつあるかないらっしゃいませの入り口と運動場に飛び出したくなる出口とちょっと外の空気が吸いたくなる小窓ちょっと後ろめたい裏口そしてさようならを言う出口あと非常口はどこにあったっけどこだっけどこだっけああそうだ右ろっこ…