小説以下

月へ行ったはず

「このロケットに乗りたいのですが」 「もちろんいいですよ。定員も割れているので」 「これはどこへ行くのですか?」 「あなたには聞こえませんか?月まで向かう、この発射音が」 それはなんだか胸騒ぎがする危険な音楽だった。 と同時にとても魅力的で、こ…

「ありがとう」

急に目の前の男が その前を歩いているサラリーマンの 後ろポケットから財布をぬすんだ その男はぬすんだ財布をこっそり 隣に歩いている学生の男のカバンに 入れ込んだ それを見た自分は 学生に罪が着せられることを 不快に思い カバンからその財布を抜き取っ…

鏡に映らない

いつからだろう。それは忘れた。 鏡に自分の姿が映らない。 美しい自分の姿が映らない。 鏡はもちろん、車の窓、ガラス張りのドアー。 街を歩いていても自分の姿はどこにも確認できない。 不安になり恋人に聞いた。 「おれはここにいるか?」と。 恋人は答え…